古都の王宮庭園と山地を巡って                関東甲信越  西川純一郎

ここ数年間は年に一度は、ドイツ中央部からやや北に位置するニーダーザクセン州の州都ハノーバーを基点として周辺の都市や古城、港町を友人に案内してもらっている。今年は6月19日から一週間程滞在し、ヘレンハウゼン王宮庭園を遊歩したり、ハルツ狭軌鉄道に乗る機会を得た。この国では比較的小さな市や町にもかなり大きな庭園がある。かつてイギリス国王をも兼ねたハノーバー王家ゆかりのヘレンハウゼン庭園が優美に静かに歓迎してくれた。17世紀末から18世紀にかけて造られたバロック様式の庭園で彫刻、花壇が幾何学模様に配置され、大きな多段式の滝からは豊富な水が流れ落ち迫力があった。中央にはヨーロッパの庭園で最も高い82mの大噴水がある。毎年ヘンデルの“水上の音楽”が演奏され、蘭や熱帯雨林、サボテンの温室が人の心を引きつけている。壮大、かつ優雅で花で文字が描かれた大花壇、金色の彫像が立ち並ぶなどドイツ初の庭園ならではである。

ハノーバーから南東へ約100Km、ドイツのほぼ中央部にブロッケン山(標高1,142m)を主峰とするハルツ山地がある。この中をハルツ狭軌鉄道が縦横に走っている、スイスのチェルマットとサン・モリッツ間を約8時間かけて結ぶ有名な氷河特急は、特急とは名ばかりで平均時速は34Km、ハルツ狭軌鉄道は日本の狭軌(線路の幅1,067mm)よりもなお狭く軌間1,000mmで車内も狭い。それでも上り坂でも80Km前後で走っていて氷河特急よりもずっと速かった。機関車に良質の石炭を使用しているせいか客室にいると、ほとんど無臭で、デッキに立った時に僅かに煙の匂いを感じる程度であった。昔「理科」の時間に習った「ブロッケン現象」(高山で日の出や夕暮れ時に太陽を背にして立ったときに,前方の霧や雲に自分の影が投影される現象)の名前の元となった山にそのSLに乗って登ることができた。こんな体験が出来たのも永年の親しい友人がいたからと思うと胸が熱くなった。

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